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特集 現代社会と家族—諸病態との関連から
離婚と児童虐待を中心とした家族危機と家族病理
著者: 池田由子12
所属機関: 1聖徳学園短大保健センター 2日本大学医学部精神科
ページ範囲:P.579 - P.584
文献購入ページに移動 児童虐待はいつの時代にも,どの文化にも存在する。わが国でも国全体が貧しく,女・子どもの人権が無視されていた時代には,「社会病理としての児童虐待」が存在した。しかし現在のわが国では,明治・大正時代と比べれば国も富み,児童福祉法,労働基準法,売春禁止法,優生保護法などの法的な歯どめもあり,年少者の労働,人身売買,売春,貰い子殺しなどはみられなくなった1)。ところが,「欧米型」,「文明国型」というか,「親個人の精神病理や家族の病理から起こる児童虐待」はむしろ増えつつある2)。
現代家族の病態として筆者に与えられたのは,「児童虐待」と「離婚」という二つの主題だが,「離婚」が「児童虐待」の前提条件とか,直接結びつくものではない。後述するように,虐待は,現代の家族の悲しむべき特徴のひとつ,「家庭の養育・庇護・相互扶助機能の衰えた場合,その上家庭内に緊張の高まった"家族危機"の際に勃発しやすい」のだが,離婚家庭の状況がたまたま,そのような諸条件に合致したとき,不幸な事件が起こり得るのである。
現代家族の病態として筆者に与えられたのは,「児童虐待」と「離婚」という二つの主題だが,「離婚」が「児童虐待」の前提条件とか,直接結びつくものではない。後述するように,虐待は,現代の家族の悲しむべき特徴のひとつ,「家庭の養育・庇護・相互扶助機能の衰えた場合,その上家庭内に緊張の高まった"家族危機"の際に勃発しやすい」のだが,離婚家庭の状況がたまたま,そのような諸条件に合致したとき,不幸な事件が起こり得るのである。
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