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雑誌詳細

文献概要

特集 現代社会と家族—諸病態との関連から

分裂病

著者: 高臣武史1

所属機関: 1復光会総武病院

ページ範囲:P.603 - P.609

I.はじめに
 私ははじめは私に与えられたテーマは「近年の分裂病像の変化と現代社会の家族の変容との関連」と考えて筆をとりはじめた。しかし途中で,「諸病態」とは本特集の犯罪・非行からうつ病までの6病態であり,分裂病はその1つであることに気づいた。そうすると「分裂病者をもつ家族の今日的な問題点,ことに我が国の現状」を書かなければならないと考えて,改めて書き直すこととした。そして一昨年(1987年)精神衛生法が改正され,昨年7月精神保健法が施行されたが,そこで問題になった「精神障害」の中核は分裂病であり,現代これを病む人の家族の抱える問題は未だほとんど解決されていないのが現状であることを述べる必要があると考えた。たとえば後に述べる社会復帰,社会福祉の問題である。
 ところがこの原稿を書き始めた頃,いわゆるリクルート疑惑が発覚し,リクルート前会長が,そして最近NTT前会長も逮捕され,ロッキード事件以上の疑惑と報道された。今の政府は21世紀の超高齢化社会に備えてといって,消費税を強行採決し,さらに厚生年金の支給年齢を引き上げ,しかもその保険料を値上げしようとしている。たしかに我が国の高齢化は著しく,老年人口は1960年頃から急増し,現在は総人口の10%を超え,2010年には20%,1925年には我が国だけが総人口の4分の1が老人で占められると推計されている。西欧諸国の老年人口が10%から20%になるのに50年から90年かかるのに,我が国はわずか25年という短期間で超高齢化社会を迎えるわけで,どの国も経験したことのない対応に迫られるわけである。そのためにはいつかは国民が福祉税ともいうべき負担をしなければならなくなる時が来るであろう。

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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