文献詳細
文献概要
特集 現代社会と家族—諸病態との関連から
現代社会の中の境界例家族
著者: 鈴木茂1
所属機関: 1県西部浜松医療センター精神科
ページ範囲:P.623 - P.632
文献購入ページに移動I.はじめに
精神疾患に対する家族研究は,周知のように,1950年代から60年代にかけて,分裂病の領域で隆盛を誇った。それは,Batesonらの二重拘束説4),Wynneらの偽相互性概念48)とロールシャッハ・テストを用いた思考障害・コミュニケーション偏筒に関する研究36,49),Lidzらによる世代間境界混乱の指摘やmarital schism,marital skewと呼ばれる夫婦類型の提唱22),日大グループの音調テストやコミュニケーション媒体区分に基づく共感性評価と事例研究14)など,一定の成果をあげた後,70年代の後半には既に沈滞していた。というよりも,最近の10年余りは,分裂病に関して得られた上記のような知見が,必ずしも分裂病家族だけに特異的に認められるものではないという事実が,いよいよ明らかにされてきた時期とみなすことができるだろう。
そして,近年再び,様々な精神疾患に対する家族研究が活発化している。本特集にみられるように,摂食障害・アルコール症・躁うつ病・家庭内暴力など,様々な疾患の家族が,“システム論的思考”とか“家族療法”といった一見目新しい旗印のもとで似通ったアプローチを受けるようになり,結果的には分裂病家族に関する旧来の知見と大同小異の家族病理像や防衛パターン様式が再発見されている。
精神疾患に対する家族研究は,周知のように,1950年代から60年代にかけて,分裂病の領域で隆盛を誇った。それは,Batesonらの二重拘束説4),Wynneらの偽相互性概念48)とロールシャッハ・テストを用いた思考障害・コミュニケーション偏筒に関する研究36,49),Lidzらによる世代間境界混乱の指摘やmarital schism,marital skewと呼ばれる夫婦類型の提唱22),日大グループの音調テストやコミュニケーション媒体区分に基づく共感性評価と事例研究14)など,一定の成果をあげた後,70年代の後半には既に沈滞していた。というよりも,最近の10年余りは,分裂病に関して得られた上記のような知見が,必ずしも分裂病家族だけに特異的に認められるものではないという事実が,いよいよ明らかにされてきた時期とみなすことができるだろう。
そして,近年再び,様々な精神疾患に対する家族研究が活発化している。本特集にみられるように,摂食障害・アルコール症・躁うつ病・家庭内暴力など,様々な疾患の家族が,“システム論的思考”とか“家族療法”といった一見目新しい旗印のもとで似通ったアプローチを受けるようになり,結果的には分裂病家族に関する旧来の知見と大同小異の家族病理像や防衛パターン様式が再発見されている。
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