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文献詳細

雑誌文献

精神医学31巻7号

1989年07月発行

文献概要

研究と報告

アルコール酩酊下における自殺—抑うつ型と攻撃性反転型

著者: 影山任佐1 青木勇人2 那須匡2 柴田洋子2 中田修3

所属機関: 1東京医科歯科大学難治疾患研究所社会医学部門犯罪精神医学 2東邦大学精神神経科 3東京医科歯科大学

ページ範囲:P.701 - P.707

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 抄録 自殺とアルコールとの関係については,従来慢性中毒やアルコール症との関係が研究上重視されてきた。急性中毒(酩酊)は専ら暴力犯罪との関係から論じられ,これと自殺の問題についての研究は未だ未解明の諸問題が多く,研究も十分ではない。本論において我々は刑事事件の精神鑑定例からアルコール酩酊下で自殺を計った6症例,7事例について酩酊下で放火した他の2症例と比較しながら主に検討した。これを次のような2群に分類した:A賦活群,B突発群。後者の突発群の特徴である,酩酊時に突然生じる自殺の解明を試み,後者の群に従来指摘されてきた「抑うつ型」の亜型以外に「攻撃性反転型」の亜型があることを明らかにした。この特徴は,(1)複雑酩酊状態で激しい興奮と他者への攻撃性が出現する。(2)攻撃対象人物が本人以外突然全員消失する。(3)この状態と状況で攻撃性が自己に向かい,自殺に至る。また攻撃性の転換に他者(家族)→家屋→自己へ向かう方向性の順序があることを指摘した。(4)この「攻撃性反転型」自殺における自宅放火の意味と役割の重要性と親和性について触れた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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