icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学31巻7号

1989年07月発行

文献概要

研究と報告

前思春期に発症し思春期中期に増悪したうつ病例—境界人格障害との関係

著者: 弟子丸元紀1 荒木邦生1 蒔田多津子1 仁木啓助1 倉元涼子1 宮川太平1

所属機関: 1熊本大学医学部神経精神医学教室

ページ範囲:P.717 - P.724

文献購入ページに移動
 抄録 2症例共に11〜12歳に,抑うつ状態で発病,発病初期は過同一性,情動面の不安定性,母に依存と攻撃的態度また逃避反応的な不安発作を示した。その後,増悪と軽快の波を示していたが,16歳の第2の分離個体化の時期に,抑うつ気分に加え,激しい怒り・感情易変性・対人不安・衝動性・問題行動(暴力,自傷)・摂食異常・盗みおよび自我障害症状を示した。基調をなす単極性のうつ状態は自我の成長の様態により変化を示した。性格特徴は11歳時は幼児性格(infantile personality)を示し,16歳時は境界人格障害と診断しえた。また薬物反応は低年齢時は抗うつ剤,抗不安剤が効果的であり,人格障害が加わった時期は抗精神病薬の効果が認められた。本例は発病初期から情動不安定さ・衝動性などの情動面の調節障害,対人関係障害,現実吟味の乏しさが存在しており,境界人格障害は幼児性格から発展したものと考えられる。また,境界人格障害と感情障害との関係について考察した。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?