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文献詳細

雑誌文献

精神医学31巻8号

1989年08月発行

文献概要

研究と報告

中国残留日本人孤児帰国者子弟にみられたCapgras症候群—引き裂かれた自我

著者: 橋村金重1 岡田理之1 加藤光彦2 清水博2 渡部多聞2 宮本宣博2

所属機関: 1高知医科大学神経精神医学教室 2精華園

ページ範囲:P.869 - P.874

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 抄録 中国残留日本人孤児が永住帰国に際し,日本に連れ帰った息子にみられたCapgras症候群について報告した。その成立機転として,日本政府により迫害されるとの妄想が関与していると考えられる。症状,発症年齢を考慮すると,基礎疾患は精神分裂病と考えられた。抗精神病薬に反応し,替え玉妄想の対象となった家族との頻回の面会および外出の経験の後,妄想は急速に消失した。本例は,中国残留日本人孤児の子供が帰国後まもなく発症したという点において,広く文化摩擦という状況の関与した精神障害として捉えることができる。今後我が国において増加が予想される中国残留日本人孤児及びその子弟の永住帰国における精神衛生上の問題という観点から若干の考察を加えた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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