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研究と報告
慢性分裂病患者にみる基底症状と「病に対する態度」について
著者: 近藤重昭1
所属機関: 1秋田県精神保健センター
ページ範囲:P.971 - P.978
文献購入ページに移動 抄録 リハビリテーションの観点から,慢性分裂病の欠陥について,G. Huberらの手法を用い,欠陥の患者主観体験である基底症状と「病に対する態度」の関連を考察した。基底症状の中では直接的マイナス症状と認知性思考障害のカテゴリーに属するのが多かったが,基底症状自体は患者人格から遠く,疾病非特異的で,ヨソモノあるいは障害するものの性格をもち,体験内容も共感が得やすい。社会復帰は欠陥をいかに克服し,自己調整するかにかかるともいえるが,それには基底症状を障害として自覚し,克服の行動様式を多様化すること,また習得した行動様式を普遍化し,新しい状況での実行振替えができなければならない。この推進役が疾病意識であり,しかも基底症状の段階が疾病意識獲得の体験基盤となり得るのである。以上から,リハビリテーションには精神力動的操作に加えて,欠陥を基底症状(基底体験)から把え直し,疾病意識を醸成する個別的学習が必要であろう。
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