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文献詳細

雑誌文献

精神医学32巻1号

1990年01月発行

研究と報告

森田療法の不問技法と精神分析の禁欲規則の比較検討—治療における秘密の視点から

著者: 長山恵一12

所属機関: 1法政大学文学部 2東京慈恵会医科大学精神科学教室

ページ範囲:P.29 - P.35

文献概要

 抄録 森田療法では患者の病態やそれに絡む個人的秘密を治療者はいっさい取り扱わない。一方,精神分析はそれらを治療者が直接取り上げ明確化しようとする。こうした違いは,患者の病態を処理するか,しないかの差で生じたものでなく,両治療法がターゲットにする病理の表現形態とその処理方法の違いに由来している。しかし,治療上の「隠し事」—森田療法における病態不問,目的本位の治療的意味。精神分析における禁欲規則の治療的意味—に着目した場合,両者には以下のごとき共通性が認められる。①治療上の「隠し事」故に治療者・患者間に心理的距離が保たれる。②治療上の「隠し事」は患者の病理故に「隠し事」と映る。患者の病理が治療を通して処理されると,それらの「隠し事」は患者に理解あるいは体得されて内在化し,「隠し事」は「隠し事」としての意味を失う。③治療上の「隠し事」は一方で患者の病理と深く係っており,他方ではその病理をどう処理するかという具体的な治療のシステムとも密接に係っている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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