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文献詳細

雑誌文献

精神医学32巻1号

1990年01月発行

文献概要

研究と報告

小脳障害を残遺した向精神薬による悪性症候群の4例—リチウム中毒の問題点に関連して

著者: 岩淵潔12 天野直二1 柳下三郎3 長友秀樹4 松下正明4

所属機関: 1神奈川県総合リハビリテーションセンター精神神経科 2現・東京都精神医学総合研究所神経病理 3神奈川県総合リハビリテーションセンター病理 4横浜市立大学医学部精神医学教室

ページ範囲:P.81 - P.89

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 抄録 向精神薬による悪性症候群(NMS)により,不可逆的な神経障害として小脳失調症を残遺した4例について検討した。うち重症2例はさらに粗大なchoreoathetosis様不随意運動と全身性の筋原性筋萎縮および表出能力の高度な障害を認めた。神経病理では小脳プルキンエ細胞-小脳遠心路系の急性崩壊像をみた。NMSの原因薬剤はhaloperidol 3例,fluphenazine-enanthate 1例で,3例は少量投与で発症し,軽症2例はnon-rigidity型NMSであった。小脳症状はNMSが回復した時点で明らかとなり,その後改善傾向を示したが,ある段階で固定性であった。発症当初のCT scanでは小脳萎縮はなく,経過を経てそれを認めた。これらをリチウム中毒と比較検討し,NMSを含め,その後遺症はすべて小脳障害であることを明らかにし,純粋リチウム中毒とリチウム中毒を伴うNMSおよびNMSに区別して論じる必要性を報告した。とくに経過中出現する脳幹障害に注意すべきことを強調した。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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