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分裂病の陰性症状
著者: 吉松和哉1
所属機関: 1信州大学医学部精神医学教室
ページ範囲:P.1036 - P.1048
文献購入ページに移動I.はじめに
近年,精神分裂病の症状をめぐって陽性症状と陰性症状とに分類することが,一つの時代を象徴するがごとくに脚光を浴びている。そしてそれは臨床的な次元にとどまらず,分裂病概念の歴史も含め,この病気そのものを問うことにつながる。ところで,特にこの問題が強い関心を惹くようになった契機として,Schizophrenia Bulletin誌11巻3号(1985)の「分裂病の陰性症状」特集41)の力が大きかったであろう。さらにこれより前,この問題に今日の視点を持ち込み,大きな関心を引き起こしたのはCrowであるが,彼はその1980年の論文17)において,分裂病の症状を二大別して症候群タイプⅠと症候群タイプⅡとし,それぞれに該当する症状を挙げながら,これに陽性症状と陰性症状の名を与えた。
我が国では近年,諏訪72)がこの問題について懇切な解説を試みた。諏訪71)はそれ以前にも日本精神神経学会総会でこの問題を取り上げ,我が国の精神医学界に対し本題についての関心を喚起している。さらにこれ以前,岡崎と太田57)はCrowの説を中心としながら,本主題について内容の濃い紹介をし,自らの見解を述べている。ところが最近,たて続けにこの問題を特集した雑誌が現れた。すなわち,「精神分裂病における陰性症状」のシンポジウムを特集したBr J Psychiatry誌(Vol. 155,Suppl. 7,1989)や,また我が国の“精神科診断学”誌(Vol. 1,No. 3,1990)の「特集:陰性症状の意義と評価」である。特に前者にはそれまでの英米圏の学者に加えて,ドイツ語圏の学者が参加しており,その意義は大きいものと考える。
近年,精神分裂病の症状をめぐって陽性症状と陰性症状とに分類することが,一つの時代を象徴するがごとくに脚光を浴びている。そしてそれは臨床的な次元にとどまらず,分裂病概念の歴史も含め,この病気そのものを問うことにつながる。ところで,特にこの問題が強い関心を惹くようになった契機として,Schizophrenia Bulletin誌11巻3号(1985)の「分裂病の陰性症状」特集41)の力が大きかったであろう。さらにこれより前,この問題に今日の視点を持ち込み,大きな関心を引き起こしたのはCrowであるが,彼はその1980年の論文17)において,分裂病の症状を二大別して症候群タイプⅠと症候群タイプⅡとし,それぞれに該当する症状を挙げながら,これに陽性症状と陰性症状の名を与えた。
我が国では近年,諏訪72)がこの問題について懇切な解説を試みた。諏訪71)はそれ以前にも日本精神神経学会総会でこの問題を取り上げ,我が国の精神医学界に対し本題についての関心を喚起している。さらにこれ以前,岡崎と太田57)はCrowの説を中心としながら,本主題について内容の濃い紹介をし,自らの見解を述べている。ところが最近,たて続けにこの問題を特集した雑誌が現れた。すなわち,「精神分裂病における陰性症状」のシンポジウムを特集したBr J Psychiatry誌(Vol. 155,Suppl. 7,1989)や,また我が国の“精神科診断学”誌(Vol. 1,No. 3,1990)の「特集:陰性症状の意義と評価」である。特に前者にはそれまでの英米圏の学者に加えて,ドイツ語圏の学者が参加しており,その意義は大きいものと考える。
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