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文献詳細

雑誌文献

精神医学32巻10号

1990年10月発行

文献概要

研究と報告

脳卒中発症後のうつ病—その臨床精神医学的研究

著者: 植木啓文1 高井昭裕2 児玉佳也2 杉本直人3 若林愼一郎2

所属機関: 1岐阜県精神保健センター 2岐阜大学医学部神経精神医学教室 3岐阜医療技術短期大学

ページ範囲:P.1065 - P.1071

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 抄録 脳卒中による精神・身体的後遺症が消失し一応の社会復帰を果たしている時期にうつ病相が出現した3症例を報告し,病因,発病状況,精神科受診までの問題,治療と経過等について臨床精神医学的に検討した。
 これらの症例は,病因的には器質因性および身体機能障害に対する反応としての心因性は除外することができ,内因性うつ病様の病像を呈していた。発病状況としては,家庭・社会的役割を喪失するような事態が問題となっていた。抑うつ症状は正しく認識されるとは限らず,精神科的治療の開始までに長時間を要する場合がある。治療上,脳代謝改善剤を含めた薬物療法は不可欠であるが,脳卒中発症により変化した生活上の秩序の再構成,顕在化した葛藤に焦点をあてた精神療法的接近が必要となる。今後,人口の高齢化,脳卒中の軽症化等により,このような症例の増加が予想され,老年期精神医学およびリエゾン精神医学の立場からの対応が必要とされる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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