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文献詳細

雑誌文献

精神医学32巻10号

1990年10月発行

文献概要

研究と報告

精神分裂病患者の病前の学業成績

著者: 佐々木司1 増井寛治2 原田誠一3 高桑光俊4 熊谷直樹5 飯田茂6 高橋象二郎3 岡崎祐士7

所属機関: 1神経研究所附属晴和病院 2東京都立松沢病院 3東京都中部総合精神保健センター 4多摩病院 5東京大学医学部精神医学教室 6埼玉医科大学精神医学教室 7長崎大学医学部精神神経科学教室

ページ範囲:P.1087 - P.1094

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 抄録 精神分裂病患者の病前の学業成績を検討するため,DSM-Ⅲの精神分裂性障害の基準を満たす患者とその同胞25組(50名)の小中学校時代の通知表を対比較した。患者の成績は同胞に比べ,小学校低学年では図工で有意に低く(p<0.05),算数,音楽で低い傾向が認められたが(p<0.1),小学校高学年,中学校では有意な差は認められなかった。ただし統計学的には必ずしも有意ではないが患者の成績は同胞に比べて全般に低めであり,特に小学校低学年でその傾向が強かった。また,患者同胞ともに男性の組に比べて,患者が男性で同胞は女性の組のほうが,患者の成績が同胞に比べて低い傾向がより強かった。科目内の小項目別に比較すると小学校低学年では図工のデザイン(p<0.05),絵画・版画(p<0.1),体育の技能(p<0.05)など器用さや表現力に関わりの深い分野で,患者は同胞に比べ劣っていた。これは神経心理学的検査や神経学的検査によって分裂病の患者やhigh risk児で認められている結果と同様の傾向を示すものだった。小学校高学年では国語の読解で患者の方が同胞よりも劣る傾向(p<0.1)が認められた。これは分裂患者で発病後に認められている認知・思考障害が既に小学校時代から存在する可能性を示唆するものと考えられた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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