icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学32巻11号

1990年11月発行

文献概要

研究と報告

クッシング症候群と甲状腺機能低下症を合併した症状精神病の1例

著者: 松口直成12 井田能成12 中沢洋一12

所属機関: 1久留米大学医学部精神神経科学教室 2松口病院

ページ範囲:P.1195 - P.1199

文献購入ページに移動
 抄録 難治性うつ病あるいは精神分裂病として診断され,精神科的治療のみを受け続け,その後内分泌学的治療により精神症状の軽快をみた1例を報告した。症例は32歳の女性で,出産9カ月後にメランコリー型大うつ病と区別できない抑うつ状態で発症したが,長い間身体的変化には気づかれなかった。その後,感情の不安定性,精神運動興奮,錯乱,自殺企図,関係妄想,昏迷,発動性減退もみられた。3回目の入院中に甲状腺機能低下症,さらに副腎腺腫によるクッシング症候群の存在が発見された。甲状腺ホルモン投与および副腎腺腫摘出により,精神症状の著明な改善がみられた。一連の多彩な精神症状は内分泌精神症状群として解釈でき,両内分泌疾患がその原因と考えられた。内分泌疾患合併機序の一つの可能性として,出産後の副腎腺腫増大に伴って高コルチゾール血症が先に発現し,その下垂体に及ぼす作用により2次的に甲状腺機能低下を来たした可能性が考えられた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?