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文献詳細

雑誌文献

精神医学32巻12号

1990年12月発行

研究と報告

初老期に進行性失語を主要な初発症状とした「痴呆」を伴わない2症例について

著者: 加藤正1 濱中淑彦1 中西雅夫2

所属機関: 1名古屋市立大学精神医学教室 2岐阜県立多治見病院精神科

ページ範囲:P.1268 - P.1275

文献概要

 抄録 初老期に主に失語が前景に現れ,一定の期間全般的痴呆を認めない2症例を報告する。症例1は56歳右利き女性。発症1年半後超皮質性感覚失語を呈し,同時失認傾向を認めるが,視覚性記憶,WAIS(PIQ=102,112)はおおむね正常範囲で,CT・MRIで左シルビウス溝の軽微拡大,SPECTで左側頭葉前下部の局所血流量低下を示した。症例2は54歳右利き女性。発症4年後超皮質性感覚失語・語義失語を呈し,視覚性記憶は初診時障害がみられたが正常範囲まで回復,WAIS(PIQ=78),長谷川式痴呆スケール28,CT・MRIで両側(左>右)側頭葉萎縮と両側基底核領域の散在性小梗塞,SPECTで両側(左>右)側頭葉血流量低下を認めた。2例とも言語面を除けば社会的,日常生活能力は全く支障なく,DSM-Ⅲ-Rの診断基準から判定しても全般的痴呆とは言えず,臨床像からAlzheimer病,人格変化を来たしていない点で定型的なPick病を除外し,今回の症例の疾病学的な位置づけを文献報告例から検討した。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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