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文献詳細

雑誌文献

精神医学32巻2号

1990年02月発行

文献概要

展望

分裂病者の不気味体験—臨床精神病理学の原点をふまえて

著者: 諏訪望1

所属機関: 1埼玉医科大学神経精神科センター

ページ範囲:P.118 - P.128

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I.はじめに—この主題の背景としての精神病理学的立場
 分裂病の精神病理を主題とする場合には,まずいかなる立場で論を進めるかを明らかにしておく必要がある。ここでは,全く日常の臨床精神医学の基盤の上で,すべての精神科医に共通の言葉を用いて論述することにしたいと思う。そのためには,臨床精神病理学の立場でいわゆる記述的現象学に準拠することになるが,しかし同時に,新しい方向性の模索も当然試みられなければならないであろう。
 いうまでもなく,精神病理学は精神医学の基盤であり原動力である。また精神医学は医学,つまり疾病の予防と治療を目的とする科学の一分野であり,しかもつねに個々の人間をとりわけ生理・心理・社会的な全体的人間像としてとらえることを必要条件としている。したがって精神病理学においては,一方では科学と,他方では哲学とのかかわり合い方がつねに明確に意識されていなければならない。Jaspers6)は「精神病理学総論」の「精神医学と哲学」という項目で,「精神病理学はそれが科学に止まる限りにおいてのみ純粋である」ことを強調しながら,明晰な哲学的思考方式の必要性を説いている。そこでは,精神分析学の非科学性,非哲学性が指摘されているばかりでなく,精神病理学と実存哲学とのかかわり合い方についても厳しい批判がなされ,もしも実存哲学的思想が精神病理学的認識の手段に利用されるならば,それは科学的誤謬であるとさえ断じている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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