文献詳細
研究と報告
文献概要
抄録 本論は,30年以上都市部で暮らした女性が,農村部に転居したことを契機として幻覚妄想状態に陥った1症例を報告し,文化摩擦をめぐる病態の特徴について若干の検討を加えた。
患者の妄想世界に出現する他者は,分裂病において出現するような,何をするかわからない無気味な超越的他者ではなく,農村社会の志向性を体現する経験的個別的他者であった。つまり,患者が精神病状態において体験した事柄は,生活様式の違いから,周囲から妬まれているのではないかという病前の葛藤がより尖鋭化したものと考えられる。
患者の妄想世界に出現する他者は,分裂病において出現するような,何をするかわからない無気味な超越的他者ではなく,農村社会の志向性を体現する経験的個別的他者であった。つまり,患者が精神病状態において体験した事柄は,生活様式の違いから,周囲から妬まれているのではないかという病前の葛藤がより尖鋭化したものと考えられる。
掲載誌情報