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特集 向精神薬の見逃されやすい副作用と対策
抗精神病薬による遅発性ジストニア
著者: 原田俊樹1
所属機関: 1岡山大学医学部神経精神医学教室
ページ範囲:P.237 - P.243
文献購入ページに移動 遅発性ジストニアは長期間の抗精神病薬治療に伴う,稀ではあるが,極めて難治性の不随意運動である。多くは頸部や体幹の捻軸性筋緊張により持続性のジストニア姿勢をとり,さらに発作的にその筋緊張が強まって,そのため患者の苦痛感が極めて大きいものである。1973年,Keeganら13)によって初めてその存在が報告されたが,ちょうどそれとほとんど時を同じくしてわが国でも木下ら14)が遅発性ジスキネジアの中でもdystonicなタイプのものがあることを報告している。遅発性ジストニアは従来は遅発性ジスキネジアの一亜型で,その病態や治療も遅発性ジスキネジアに準ずるものと考えられ,さらにその頻度もあまり高くないことなどから,これまであまり注目されたことはなかった。しかし1982年,Burkeら1)によって42症例に及ぶ大がかりな臨床報告がなされ,極めてそれが難治性で,しかもその臨床的諸特徴は遅発性ジスキネジアとかなり異なることが指摘され,世界的に注目を集めるようになった。わが国においてもこれまでに2〜3例の症例報告はいくつか11,14,15)あったものの,症例を多く集め系統的な分析を行ったものは古郷らの報告16)のみであり,極めて重症の副作用でありながら,その頻度や病態はほとんど知られていなかったのが実情である。このような理由から,最近我々はこの遅発性ジストニアの実態調査を行い,その結果を既に報告している9,10)。本編ではその結果に文献的考察を交え,さらに治療によって遅発性ジストニアが完治した2症例を呈示してみたい。
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