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文献詳細

雑誌文献

精神医学32巻3号

1990年03月発行

文献概要

特集 向精神薬の見逃されやすい副作用と対策

内科領域で使われる薬剤の副作用—とくに精神神経症状について

著者: 八木剛平1 渡辺衡一郎2

所属機関: 1慶応義塾大学医学部精神神経科 2国家公務員共済組合連合会・立川病院神経科

ページ範囲:P.281 - P.289

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 精神科医が身体疾患と精神疾患の合併症者に接する機会はますます増えて来た。アメリカでは1980年以降,それまで身体疾患の心理社会的側面に重点をおいていた“consultation-liaison psychiatry”が衰退に向い30),これに代わって1980年代後半から,合併症者の身体的治療をも積極的に行う“medical psychiatry”が拾頭して来たという12)。アメリカの場合には医療費の問題も強く影響しているといわれており,日本はまだこれほど極端な傾向にはないにしても,精神科医がかかわる合併症者の増加という背景には共通点があると思われる。この特集で内科領域の薬剤が取り上げられたのも,精神科医療のこのような動向と無縁ではあるまい。
 ところで精神科医が内科系薬剤について最も必要とする知識は,精神障害を起こすおそれのある医薬品に関するものであろう。それは第1に,身体疾患に併発した精神疾患の診療を依頼された際に,それがその時に使われている薬によるものか否かの判断を下す(つまり原因診断)にあたって不可欠である。第2に,精神疾患に併発した身体疾患を治療する際に,精神疾患を悪化させないような薬を選択するにあたって必要である。第3にそれは,新しい精神科治療薬の発見や精神疾患の生化学的理解のために役立つであろう。クロルプロマジンが精神科に導入されるきっかけになったのは,それが麻酔の前投薬としてはじめて用いられた際に,術前の患者が無関心状態になるという観察であったし,抗結核薬イソニアジドによる多幸症がMAO阻害型抗うつ剤発見の端緒となり,降圧剤のレセルピンによるうつ状態がうつ病の生化学的モデルとなったこともよく知られている40)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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