精神医学32巻5号

1990年05月発行

短報

脳器質疾患を基礎に持つ登校拒否

著者： 菊池章¹ 斎藤環² 稲村博³ 大内田昭二¹

所属機関： ¹日本赤十字社医療センター精神科 ²筑波大学大学院医学研究科 ³筑波大学社会医学系

ページ範囲：P.549 - P.551

I．はじめに
　登校拒否発現の背景要因を考える場合，分裂病の存在はもとより，慢性身体疾患や脳器質性疾患の潜在を見逃すことはできない。今回我々は，Moya-moya病，透明中隔腔およびヴェルガ腔を背景に持ち，登校拒否を呈した2症例を経験したので報告する。また，これらの登校拒否に伴って二次的にみられた症状および問題行動が一般の登校拒否のそれと類似し，原疾患そのものより，むしろ登校拒否独特の心理機制によってより強い影響を受けたことを示した。