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文献詳細

雑誌文献

精神医学32巻7号

1990年07月発行

文献概要

展望

ICD-10を中心とした精神疾患診断基準の動向

著者: 北村俊則1 栗田広1 藤縄昭1

所属機関: 1国立精神・神経センター精神保健研究所

ページ範囲:P.686 - P.694

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I.はじめに
 今では改めて説明する必要もないと思うが,国際疾病分類International Classification of Diseases(ICD)というのは,世界保健機構World Health Organization(WHO)がその成立以来作成してきた全領域の疾病分類で,目的はあくまでも現実に使用されている術語を用いて,統一された診断の枠組みを決め,国際的な統計,分類に耐える資料を集めることであった。ところが精神医学のみでなく,他の医学領域でも,種々の学派や立場があって,使用される診断名は様々であり,特に精神医学ではその差が著しく,ICDについても第7回修正まではこれを用いる国は少なく,各国ではそれぞれに独自の分類を用いるのが通例であった。日本ではICDは主として死亡診断にのみ重点がおかれており,今日でもICDは死亡統計のためのものだと思っておられる方が少なくない。ところで以下にICD-8,-9から,ICD-10へ至る経緯を簡単に述べるが,-8,-9の作成に係わった加藤正明4)と-10に関しては山下格19)の説明に依拠していることをあらかじめお断りしておきたい。
 精神障害のICDについてWHOが国際的レベルで再検討することになったのは,1959年にイギリスの精神医学的疫学の長老であるStengelがICDを大々的に変更する必要のあることをWHOに申し入れたことから始まる。1960年にWHOの専門委員会として「精神障害の疫学会議」が開かれ,以後ICD-8の検討が始まることとなったが,わが国では加藤正明がその任に当たった。ICD-9はその「記載事例演習による専門委員会」の検討の結果,1977年に作成され,glossaryとともに加盟各国に正式に通知されて,日本語にも訳され厚生省統計情報部で検討のうえ,疫学分類に使用されることとなった。その時から10年後には,ICD-10として改正されることになっていた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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