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文献詳細

雑誌文献

精神医学32巻7号

1990年07月発行

文献概要

研究と報告

精神分裂病の病型について—日本と西ドイツにおける分類の比較から

著者: 立山萬里1 神定守2 浅井昌弘3 保崎秀夫3

所属機関: 1都立医療技術短期大学作業療法学科 2井の頭病院 3慶応大学医学部精神神経科

ページ範囲:P.703 - P.709

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 抄録 精神分裂病の病型分類について,日本などアジアでは,欧米に比べて単純型や緊張型が多く,妄想型は少ないなど,分裂病の病像が違うといわれていた7,8)。しかし,欧米と日本の精神科医側の病型の分類基準が違っている可能性もある。今回,西ドイツと日本の両国において,ほぼ同時期に入院し,発症年齢や罹病期間に差のない分裂病者の病歴を用いてこの点を調べた。〔対象〕チュービンゲン大学神経科に1984年度に入院した150例と,慶応大学病院精神神経科および都下精神病院に83〜85年度に入院した178例。分裂病の診断と病型分類は,両国とも各担当医および指導医がICD-9に基づき行った。〔方法〕Ⅰ.両国の担当医が分類した病型を比較する。Ⅱ.西ドイツ例の病歴から,日本の精神科医が病型分類し,西ドイツ側の分類と比較する。〔結果〕Ⅰ.1)日本例は,①破瓜型(295.1)39.9%,②妄想型(295.3)28.7%,③緊張型(295.2)8.4%の順に多く,西ドイツ例は,①妄想型48.7%,②分裂情動型(295.7)15.3%,③残遺分裂病(295.6)14%の順であり,日本では破瓜型や緊張型の分類例が有意に多く,西ドイツでは妄想型や分裂情動型の分類例が有意に多かった。2)破瓜型に関して,西ドイツ例のほうが発症年齢がより低く,慢性に発症した例で,入院時の主症状が自発性減退の例の割合が多い傾向があった。3)妄想型に関して,日本例のほうが発症年齢がより高く,発症時の主症状が幻覚妄想の例の割合が多かった。Ⅱ.の結果も1)と同様であった。以上より,今回の両国の病型分類の違いは,主に精神科医の分類基準の違いによるもので,破瓜型や緊張型は西ドイツではより狭義に分類されており,反対に妄想型や分裂情動型は日本ではより狭義に分類されていると言えた。この違いの主因として,両国の分裂病症状のとらえ方の相違があり,それが両国の精神医学の成り立ちによる点を,Kraepelin, E. を中心に考察した。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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