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特集 精神疾患の現代的病像をめぐって
妄想と時代背景
著者: 藤森英之1
所属機関: 1東京都立松沢病院
ページ範囲:P.821 - P.828
文献購入ページに移動我が国の能,謡曲,狂言あるいは浄瑠璃や歌舞伎の世界で「物狂」や「狂乱」が好んで題材とされてきたことは周知の事実である。それは文字どおり舞台の上の「狂気」と同じ時代を生きた人々とのかかわりを物語っている。つまり,そこには同時代における常民の狂気観ばかりでなく,物狂をとおして織りなされる入り組んだ人間模様の綾が読み取れる。医学の分野においても医学史家は,ある時代の狂気とその時代の医学観や社会の対応とに関心がある。ここで筆者はこれまでに調べた都立松沢病院の明治・大正・昭和の病歴にみられる精神分裂病(以下,分裂病と略す)の妄想主題の時代変遷6〜9)と,最近の日本と中国の妄想内容の比較資料10,11)とをよりどころにして若干の考察をする。
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