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文献詳細

雑誌文献

精神医学32巻8号

1990年08月発行

特集 精神疾患の現代的病像をめぐって

思春期青年期の臨床像—主に行動障害をめぐって

著者: 舘哲朗1 狩野力八郎1

所属機関: 1東海大学精神科学教室

ページ範囲:P.853 - P.860

文献概要

I.はじめに
 思春期を迎える若者は第二次性徴に始まる身体の性的成熟という変化と,愛情対象の親に対する依存を克服して自律するという課題に直面する。身体の性的成熟という変化は,一方で新たな感覚を覚えることや成長を感じる満足の体験ともなるが,同時に得体の知れない,統制の効かない衝動の高まりや身体感覚を体験させて,若者を不安にもさせる。そして,生理的変化に基礎づけられた内的緊張を発散させたいという欲求と,衝動的な行為をコントロールする必要との間で揺れ動く。また価値基準を示していた親から離れて,より自律的になることが課題となるために,このような身体の生理的変化に対処するための行動規範が変動的なものとなって,衝動の処理をめぐって不安定となる。それ故,思春期青年期の若者の行動が,不安定で,多少混乱したものにみえるのは避けられないことである。
 葛藤やストレスに対して,若者はいろんなやり方で対処する。スポーツや遊びで昇華している者,自らを周囲の期待に合致させて過剰なまでに適応しようとしている者,社会的な対人関係から引きこもり,空想生活に退行している者,不安・緊張・怒りを抑圧し,否認して,心気的あるいは身体症状を発展させたり,抑うつ状態に陥っている者,あるいは様々な行動化を起こし,いわゆる非行や行動障害を発展させている若者もいる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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