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文献詳細

雑誌文献

精神医学32巻8号

1990年08月発行

文献概要

紹介

家族の表出感情(Expressed Emotion)研究の歴史と現況

著者: 三野善央1

所属機関: 1高知医科大学公衆衛生学教室

ページ範囲:P.909 - P.917

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I.はじめに
 精神分裂病(以下,分裂病とする)の経過に及ぼす環境要因の役割に関して,今日ではそれを否定し去る精神科医は少ないと思われる。とりわけ,その中でも家族の与える影響は,これまでに多くの精神科医,心理学者などによって注目され,様々な指摘がなされてきた。
 これまで,分裂病の家族研究に関しては,いわゆる病因論的な立場での研究が多かった19)。それらの多くは,分裂病の原因に関して家族の責任を問うというものであり,それは当然のことながら,患者本人はもちろん家族に対しても役立つことは少なかった19)ように思われる。また,そうした研究が真に分裂病者の利益につながって行くためには,科学的研究の積み重ねが不可欠である。そうした意味で,ロンドンの精神医学研究所社会精神医学部門を中心に行われてきた家族の表出感情(expressed emotion, EE)と分裂病の経過に関する研究は,最も期待の持てる家族研究の1つと思われる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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