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文献詳細

雑誌文献

精神医学32巻9号

1990年09月発行

短報

覚醒剤乱用と酩酊の影響によって放火を犯した症例—責任能力をめぐって

著者: 小林一弘1 大原健士郎1

所属機関: 1浜松医科大学精神神経科

ページ範囲:P.1007 - P.1010

文献概要

I.はじめに
 覚醒剤による精神障害によってひき起こされた犯罪は数多い。昭和20年代の覚醒剤第1期乱用期には覚醒剤中毒による精神病状態での犯罪は心神喪失とする考えが主流であった。これは,覚醒剤中毒が,覚醒剤という毒物が脳に作用して起こった外因性の精神障害であるという考えに基づくものであった。しかし,近年わが国において第2時乱用期と呼ばれるような状況にあり,その責任能力については議論が高まってきている。その結果,単に幻覚・妄想の存在を理由に心神喪失とする見解は否定されてきている。しかし,その責任能力に明解な答えがあるかというと,今だ結論に至っていないのが現状である。今回,我々は,複雑酩酊の素因をもつ者が,覚醒剤によってひき起こされた包囲攻撃状況下でアルコール酩酊し,放火を犯した症例を経験した。包囲攻撃状況は,覚醒剤精神病の妄想主題としては珍しいものではない。しかし,本症例では酩酊の影響を無視することはできない。そこで,本症例が犯行を起こすに至った状況を考察し,その責任能力に対して本精神科としての意見を述べることにした。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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