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文献詳細

雑誌文献

精神医学33巻1号

1991年01月発行

文献概要

「精神医学」への手紙

Letter—精神分裂病における陰性症状と抑うつ症状

著者: 北村俊則1

所属機関: 1国立精神・神経センター精神保健研究所

ページ範囲:P.58 - P.58

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 「分裂病の陰性症状」と題する総説の中で吉松3)は,抑うつ関連症状は陰性症状と相関しているが,抑うつ気分そのものは陰性症状と相関しないことを引用した上で,陰性症状と抑うつ症状は臨床的にまぎらわしいが,本質的には異なると結論している。しかし,うつ病挿話について陰性症状評価尺度Scale for the Assessment of Negative Symptoms(SANS)を適用したChaturvediら1)は,うつ病挿話中にも高い頻度で陰性症状がみられると報告している。
 そこで我々2)は精神科入院患者193名〔RDC定型うつ病(MDD)75例,躁病(MAN)24例,分裂感情病抑うつ型(SADD)24例,分裂感情病躁型(SADM)13例,非感情性精神病(主として精神分裂病)(SCHZ)57例〕について,SANSとハミルトンうつ病評価尺度(HRSD)による評価を行った。SANS総合点はSADD,SCHZ,MDDにおいて他に比べて有意に高く,またHRSD得点はSADDとMDDにおいて他に比べて有意に高かった。さらに,MDD,MAN,SADDではHRSD得点がSANSのすべての下位尺度得点と有意の相関を示したが,SCHZはこれが著しく低いことが認められた。したがって,吉松が指摘するように,陰性症状と抑うつ症状は精神分裂病においては本質的に異なると思われるが,定型うつ病および分裂感情病抑うつ型では両者が近似の症状であるように推測できる。こうした所見は,今後のsymptomatologyの研究はnosologyの研究と常に連携する必要があることを示唆しているといえよう。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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