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文献詳細

雑誌文献

精神医学33巻10号

1991年10月発行

文献概要

研究と報告

皮膚寄生虫妄想を呈したアルコール多量飲用者の1例

著者: 永瀬文博1 赤崎安昭1 野間口光男1 森岡洋史1 長友医継1 松本啓1 中川潔2

所属機関: 1鹿児島大学医学部神経精神医学教室 2三州病院

ページ範囲:P.1105 - P.1109

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 【抄録】 皮膚寄生虫妄想を呈したアルコール多量飲用者の1例について報告した。症例は52歳の男性で,30年間にわたって多量のアルコールを飲用していたが,知人の死を契機に,陰部を中心に下肢や背部に激しい体感異常が出現した。そしてこれらの体感異常に対しては,亡くなった知人の霊がダニ様の虫になり代わって引き起こしているのだと妄想的に解釈していた。本症例においては,断酒と抗精神病薬投与により,妄想的解釈に変化はみられなかったが,体感異常は比較的速やかに消退した。
 本症例は,長年のアルコール多量飲用に基づく末梢神経障害,インポテンス,痔核といった基礎疾患により皮膚の感覚変化が生じ,これらが体感異常を発現させる基盤になったと考えられた。そして,知人の死による孤立的,疎外的な不安状況,および知人に対する罪悪感が心因として加わり,体感異常を妄想的解釈に発展させたものと考えられた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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