短報
同一健康成人におけるdesmethylimipramineおよびclonidine投与による成長ホルモン分泌刺激試験の比較
著者:
佐藤佳夫1
中河原通夫1
平野雅己1
篠原学1
宇田川雅彦1
假屋哲彦1
所属機関:
1山梨医科大学精神神経医学教室
ページ範囲:P.1245 - P.1247
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近年,躁うっ病では,脳内モノアミン受容体の機能異常が考えられており,脳内物質の変動や,脳内受容体の感受性を反映する生物学的指標が求められている3)。なかでも,神経内分泌を利用した指標は,1960年代後半から注目され,いくつかの負荷テストが考案されてきている。その中では,デキサメサゾン抑制試験(DST),TRHテスト,成長ホルモン(GH)分泌刺激試験などの負荷テストが主流となってきており,多くの研究報告がなされている7)。なかでも,Matussekら5)により始められたclonidineテストや,Calilら2)により初めて行われたdesmethylimipramine(DMI)テストは,視床下部における後シナプス膜のα2受容体の感受性を検討する指標として注目されている。clonidineはα2アドレナリン作動薬で,直接α2受容体に作用する。一方,DMIは,選択的なノルアドレナリンの取り込み阻害を持つ三環系抗うつ薬であり,シナプス内のノルアドレナリンを増加させることによって,α2受容体に作用すると推定されている。α2受容体は,ノルアドレナリン作動性神経の前シナプス膜と後シナプス膜に存在しているが,GH分泌反応は後シナプス膜のα2受容体によって引き起こされると考えられている4)。
今回,我々は,同一健康成人に6カ月の間隔をおいて行ったDMIテストを2回,clonidineテストを1回施行し,これらのGH分泌刺激試験がうつ病のtrait markerとなりうるのかどうかについて,各個人の視床下部の後シナプス膜におけるα2受容体の感受性の変動の有無を検討した。