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特集 不安の病理
「不安」の精神医学—精神病理学,精神分析はどうとらえるか
著者: 鈴木國文1
所属機関: 1京都大学保健管理センター
ページ範囲:P.1277 - P.1285
文献購入ページに移動不安という言葉はおそらく精神医学の中で最もよく用いられる言葉の一つであろう。この言葉は精神医学の隅々に根を張り,その臨床の随所で顔を出す。「不安ですか」あるいは「不安です」という言い方はここでは通りの良い通貨のようなものである。それだけにこの言葉は,いささか手垢にまみれたという観をぬぐえない。
あるいはこうも言えるだろう。精神科は,いわゆる精神病からその裾野へと,不安によってその間口を広げてきたと。なぜなら,人が精神科を訪れるのは,他者によって連れてこられるのでなければ,たいていは彼自身に耐えきれないその不安のためだからである。このことは常識的には,その頻繁さという点で「症状としての不安の重要さ」を,他方,裾野という点で「不安と正常心理とのつながり」を示していると見ることもできるだろう。しかし,不安を「症状」としてとらえるか否か,さらには「正常心理」とのつながりをどう考えるか,この2点は,実は,不安に関する様々な理論の立場を分ける重要なポイントとなってきた。
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