文献詳細
研究と報告
文献概要
【抄録】 患者は,22歳の男性。中学3年生時,学校で同級生のある女生徒に手の凍瘡をからかわれたが,その夜,「傷にみせかけたらいい」と唐突に思いつき,凍瘡の部分を自らコンクリート壁にこすりつけた。しかし,その後患者は,傷を作ったことを非常に後悔して,傷が治癒してまったく目立たなくなった後も傷跡ばかりを見つめ,また,「傷ができたために他人から哀れに思われるのではないか」と恐れて傷跡を隠そうとする醜形恐怖症状が出現した。
約4年間上記症状が続いたが,初めて職場の同僚に悩みを打ち明けたところ,「傷跡は気にするほどのものではない」と,一笑に付され,それを契機に他人から傷跡を見られることに対する恐れは急速に消失した。しかし,その後,傷跡を気にしたために楽しく過ごせなかった過去に対する後悔が出現し,そのために手の傷跡を頻回に見つめるという行為が持続した。
このような,発病当初から患者に一貫して認められている手の傷跡を見つめる行為を通して,患者における傷跡の持つ意味を精神病理学的に考察した。
約4年間上記症状が続いたが,初めて職場の同僚に悩みを打ち明けたところ,「傷跡は気にするほどのものではない」と,一笑に付され,それを契機に他人から傷跡を見られることに対する恐れは急速に消失した。しかし,その後,傷跡を気にしたために楽しく過ごせなかった過去に対する後悔が出現し,そのために手の傷跡を頻回に見つめるという行為が持続した。
このような,発病当初から患者に一貫して認められている手の傷跡を見つめる行為を通して,患者における傷跡の持つ意味を精神病理学的に考察した。
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