icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学33巻12号

1991年12月発行

研究と報告

手の傷跡を頻回に見つめる醜形恐怖症の1例

著者: 森岡洋史1 中川潔2 野間口光男1 寿幸治1 松本啓1

所属機関: 1 2三州病院

ページ範囲:P.1351 - P.1356

文献概要

 【抄録】 患者は,22歳の男性。中学3年生時,学校で同級生のある女生徒に手の凍瘡をからかわれたが,その夜,「傷にみせかけたらいい」と唐突に思いつき,凍瘡の部分を自らコンクリート壁にこすりつけた。しかし,その後患者は,傷を作ったことを非常に後悔して,傷が治癒してまったく目立たなくなった後も傷跡ばかりを見つめ,また,「傷ができたために他人から哀れに思われるのではないか」と恐れて傷跡を隠そうとする醜形恐怖症状が出現した。
 約4年間上記症状が続いたが,初めて職場の同僚に悩みを打ち明けたところ,「傷跡は気にするほどのものではない」と,一笑に付され,それを契機に他人から傷跡を見られることに対する恐れは急速に消失した。しかし,その後,傷跡を気にしたために楽しく過ごせなかった過去に対する後悔が出現し,そのために手の傷跡を頻回に見つめるという行為が持続した。
 このような,発病当初から患者に一貫して認められている手の傷跡を見つめる行為を通して,患者における傷跡の持つ意味を精神病理学的に考察した。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら