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特集 精神科領域におけるレセプター機能の研究の進歩
[指定討論]5-HT2受容体とシグマ受容体の抗精神病作用との関連について
著者: 金野滋1
所属機関: 1東京医科歯科大学保健管理センター
ページ範囲:P.133 - P.136
文献購入ページに移動松原氏らの研究目的は,最終的には分裂病陰性症状に5-HT機能が関与しているか否か明らかにすることにあるといえる。さしあたり各種抗精神病薬の5-HT2受容体とD2受容体に対する遮断力価の比が,typical antipsychotic drug(TAD),とatypical antipsychotic drug(AAD)の分類の指標になることに力点をおかれた。そのKi値の結果をみると,確かにAADおよびその候補とされる薬剤のほとんどで,Ki値の5-HT2/D2比は0.1以下で相対的に5-HT2受容体に対する遮断効果のほうが強い。従来,thioridazineのような錐体外路性副作用の少ない抗精神病薬のその特徴は,抗コリン作用を持っているためと説明されてきた。代表的AADの一つであるclozapineについてもそのように考えられてきた。しかし,松原氏らの指摘どおり,この二つの薬剤の各種受容体に対する親和性のプロフィール(図1)からみても,相対的に強い5-HT2受容体拮抗作用がAADの錐体外路性副作用の少なさの生化学的基盤の一つである可能性は十分ある。ただし,報告の中でAADとして位置づけられている薬剤の中には,今のところAADの候補にしか過ぎずAADと分類するだけの十分な臨床所見が得られていないものが含まれていることにも留意する必要がある。しかも,ここでこの説明に当てはまらない薬剤の存在を指摘しておかなければならない。TADの分類に入れられているpimozideは示されたとおりD2受容体に極めて選択性が高く,5-HT2受容体に対しては弱い選択性を持っている。各種受容体に対する相対的親和性プロフィールがこのpimozideに最も似ている薬剤に代表的なAADであるsulpirideがある。sulpirideは相対的にpimozide以上にD2に対して親和性が高く,5-HT2に対して低い。今回示された結果の中にsulpirideは含まれていないが,この代表的AADは松原氏らの分類では最も典型的なTADになる。したがって5-HT2受容体に対する親和性の高さでのみAADを特徴づけるわけにはいかないと考えられる。
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