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雑誌詳細

文献概要

古典紹介

J. P. Falret—循環精神病あるいはマニーとメランコリーとの規則的交替によって特徴づけられる精神病の1型について(1854)

著者: 西園マーハ文1 濱田秀伯1

所属機関: 1慶応義塾大学医学部精神神経科学教室

ページ範囲:P.199 - P.210

循環精神病あるいはマニーとメランコリーとの規則的交替によって特徴づけられる精神病の1型について原注1)(1854)
 私は循環精神病という語で言い表そうとすることがらを既に337ページ訳注1)に示したが,ここでは,この新しい型の精神病について,さらに詳しい記述をしようと思う。しかし,記述そのものに取りかかる前に,種々の精神病における寛解と間歇性について,いくつかの事実を指摘しておくことが重要である。先ずそれらの精神病を除外することから始めなければ,この型の精神病と混同される可能性があるからである。これが,循環精神病という名で私が表現することがらを正しく理解していただく唯一の方法である。
 いかなる精神疾患も,多少とも顕著な寛解(rémission)があり,様々な強度の発作性(paroxysmus)を有するものである。病気の強さも性質も,ずっと同じままで続くことほど稀なものはない。これは,一般的に知られた事実で,精神医学と同様,一般医学においても観察されることである。しかしながら私が思うには,これまで,精神疾患の経過中にみられる,このような寛解と発作の頻度や強度については,あまり強調されることがなかったようであり,いくつかの重大な間違いが生じたのも,こうした観察を欠いたことによる。例えば,全般精神病において,互いに全く異なる多くの患者が,マニー患者という属名のもとに,無差別に分類されてしまう理由の一つにもなっている。また部分精神病の研究においても,この観察上の空白のために,妄想やモノマニーはそれぞれ独立したものだという学説が信じられているが,これは科学的見地からは全く誤っており,精神病者の治療や,司法医学的見地からみても有害である。というのは,この学説では,精神病を,強い情動と同列にみなし,両者の間に,何ら境界線を設けていないからである。

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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