icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学33巻3号

1991年03月発行

研究と報告

麻痺肢からの幻聴を示した脳卒中後遺症の1例

著者: 田中恒孝1 友野勝美1 平林一2 藤田勉2

所属機関: 1国立小諸療養所 2リハビリテーションセンター鹿教湯病院

ページ範囲:P.251 - P.257

文献概要

 【抄録】 自己の麻痺肢からの幻聴に支配されて,健側肢の行動を妨害する異常運動を示した脳卒中後遺症の1症例を報告した。患者は66歳の右利き女性で,左被殼出血にて約1カ月間にわたる意識障害から回復したのちに,重度通過症状群と右完全片麻痺を示したが失語や失行,失認はなかった。発症約3カ月後にリハビリテーションセンター鹿教湯病院へ入院し,治療によって精神・身体機能が著しく改善しつつある時期(病後約6カ月)に,健側肢の行動に先立って麻痺肢から「私がやる!」との幻聴を生ずるようになった。患者は右片麻痺の存在を自覚していながら,幻声を信じて麻痺肢を動かし健康肢の行動を妨げる異常運動を重ねていた。麻痺回復に対する過度の願望を捨てさり(麻痺の受容),訓練に励んで杖歩行可能になるのと時期的に一致して幻聴は消失した。麻痺肢から生じたこの特異な幻聴について考察し,その発現機制に関して精神力動論的解釈を試みた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら