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トントン拍子体験と既定妄想—時間性の変化からみた単一精神病的妄想形態布置論
著者: 岩井一正1
所属機関: 1東京女子医科大学神経精神科
ページ範囲:P.291 - P.298
文献購入ページに移動 【抄録】 単一精神病的な基本視点から,妄想形態の全体的な布置に関する試案を提示する。位置づけにあたって,臨床的には躁-うつ,躁うつ病圏-精神分裂病圏,それに急性-慢性の対極性を構成する3次元を分離した。これらはそれぞれ異なった,時間性の障害軸に対応している。生リズム障害の促進と遅滞を基盤にした第1の軸上で,抑うつ性のあとの祭りに対峙している妄想の準備野は,従来注目されなかった,躁性のトントン拍子の体験野である。既知感に溢れ,他者性を含まぬこの体験野を輪郭づけ,アンテ・フェストゥムと対比することによって,循環病性と分裂病性とを対峙させている時間性を第2軸として分離した。妄想体験と妄想観念の相違にも通ずる,急性と慢性の対極性は,第3軸に捉えられる。疾病区分を超えて慢性妄想をまとめる徴標として,妄想内容に現れる運命的既定性という時間の性格を,急性妄想全般にみられる運命的未決性の体験と対比した。
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