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文献詳細

雑誌文献

精神医学33巻5号

1991年05月発行

文献概要

展望

強迫性障害と薬物療法

著者: 中澤恒幸12

所属機関: 1東京都済生会中央病院 2長谷川病院

ページ範囲:P.456 - P.470

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強迫性障害の生物学:最近の動向
 Salzman & Thaler 198156)は1978年以前の強迫性障害(Obsessive-Compulsive Disorder:OCDと略す,特に断らない限り強迫神経症を指す)の文献をまとめ,OCDの薬物療法はある程度の不安を軽減させることのほかは症状改善に何も手を下しえないと報告した。当時すでにRenynghe de Voxrie 196852)は15名のOCDにclomipramine(Anafranil:CMIと略す)を用い10名に改善をみているが,CMIの二重盲検が行われたのは1980年以降であった。この6〜7年OCDに対する行動療法(特に純粋強迫)が普及し,またCMIを中心とするセロトニン(5-HT)再取り込み阻害薬の一群が治療によく用いられることもあり,OCDを“なんとか改善に向わせる”ようになった。
 とはいえ,OCDの強烈なエネルギーが減ったわけではない。一体trichotillomaniaのごとく加齢との関係を除けばOCDの自然治癒はあるのだろうか?子供のOCDの中には急速に症状消失する群がある。だが10年,15年後OCD再燃ならずとも境界例,摂食障害あるいはアルコール依存の形で社会適応が難しくなる例も稀ではない。OCDとうつ病はよく結びつけられる。確かにOCDを少しでもhypomanicにできれば症状は動かしうる。事実症例報告ながら,CMI投与によるOCD躁転,強迫症状消失例がある(Inselら1983,Keckら1986,Bernardoら1988など)。Zoharら198769)はうつ病とOCDの生物学的指標を比較し,OCDはデキサメサゾン抑制試験で非抑制例の割合が高く,REM潜時(入眠から最初のREM出現までの時間)の短縮があり,この2点は大うつ病と一致し,またOCDが慢性に経過する,とepisodic depressionを伴うことが多いなどを類似の理由に挙げている。だが異なる点もあること,臨床上OCDの分裂病的側面も否定できない40)。また実験的認知研究からOCDの情報処理の特異性を唱える報告もみられる61)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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