文献詳細
巻頭言
文献概要
死は生物界の永遠の宿命である。しかし,こと自らの死がどんなものであるかについては,所詮誰も理解することはできないであろう。周囲の人々の死は歴然たる事実として誰もが認識できるのに,自らの死を客観視できないところに,自分の死と他人の死との間に恐るべき懸隔がある。これは他人の脳死,安楽死,尊厳死でさえ,自らのそれとおき換えてみても同じである。死は一度しか訪れないし,死者は常に黙して語らないからだ。
ところが死に瀕しながら蘇った経験をもっ人,いわば死をかいまみた者の体験から死を語ることはできるであろうか? それさえも不可能といわざるをえないのだが,実は筆者自身がかってそれを体験した者として,いつかは書き留めておきたいと思っていたことである。医学者の一人としても,長い間それは義務だと考えていた。
ところが死に瀕しながら蘇った経験をもっ人,いわば死をかいまみた者の体験から死を語ることはできるであろうか? それさえも不可能といわざるをえないのだが,実は筆者自身がかってそれを体験した者として,いつかは書き留めておきたいと思っていたことである。医学者の一人としても,長い間それは義務だと考えていた。
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