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文献詳細

雑誌文献

精神医学33巻6号

1991年06月発行

文献概要

研究と報告

失立失歩の臨床研究—特にヒステリー性格およびその力動性について

著者: 柴田恵理子1 鍋田恭孝2 石田松雄3 野村総一郎4

所属機関: 1国立小児病院 2防衛医科大学校精神医学教室 3医療法人静心会桶狭間病院 4立川共済病院精神科

ページ範囲:P.643 - P.651

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 【抄録】 ヒステリーの代表的な転換症状である失立失歩に視点をおき,発症年齢,失立失歩の持続期間,性格傾向,失立失歩以外の症状(解離症状,自律神経症状,行動化),失立失歩の発症状況,生育した家族状況,予後などについて検討した。対象は藤田学園保健衛生大学病院精神科を失立失歩を主訴として受診した17例である。症例は,不登校あるいは不登校傾向から失立失歩の発症へと移行している若年例,典型的なヒステリーの心性として理解できる思春期例,むしろsomatization disorderとも言える高年齢発症例の3つのサブグループにまとめられる。生育歴からは,母親が父親や社会の規範に忠実であり,患者との情緒レベルでの交流に欠けていた様子と,その枠に合うように頑張っている患者の姿とがうかがわれ,これ以上できないという状態の中で発症に至っていた。それゆえ治療としては,治療関係の中で,この休むことができない心性を扱う必要があると考えられた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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