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文献詳細

雑誌文献

精神医学33巻7号

1991年07月発行

研究と報告

長期にわたる抑うつ状態の経過中,Basedow病を呈した1症例

著者: 小泉典章1

所属機関: 1信州大学医学部精神医学教室

ページ範囲:P.719 - P.724

文献概要

 【抄録】 長期にわたる抑うつ状態の経過中,Basedow病を呈した1症例を報告した。症例は62歳の女性で,夫の死後,寂しさが続き,体調もすぐれなかった。2年後,下痢と同時に不眠,抑うつ感,悲哀感,体重減少,軽い希死念慮を訴え,メランコリー親和型性格で日内変動もあり退行期うつ病と診断され,抗うつ剤治療により1年後軽快した。さらに,1年間の寛解期間を経て同様な症状が出現し,発汗,頻脈も加わる。苦悶感,自責感が強く,精神症状が前景に出て,あたかも激越性うつ病とそれに伴う自律神経症状と判断したが,眼球突出,甲状腺腫が目立ち始め,Basedow病の的確な鑑別診断と治療が必要だった。T3398.2ng/dl,T428.6μg/dl,TSH 0.07μIU/ml。その後,euthyroid stateでも抗うつ剤を中止すると,再び抑うつ症状が出現したことから,抑うつ状態とBasedow病とは別個に生じ,激越性うつ病の病像に修飾され,またその回復過程にも影響していたものと思われる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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