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文献詳細

雑誌文献

精神医学33巻8号

1991年08月発行

文献概要

展望

Panic Disorderの薬物療法

著者: 藤井薫1

所属機関: 1大分医科大学精神神経医学教室

ページ範囲:P.798 - P.809

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はじめに
 1962年,Kleinら25)はニューヨークのヒルサイド病院で,各種向精神薬の治験を重ねてみた結果,imipramineがepisodic anxietyを主症状とする14例全例に有効であったと報告した。彼26)はこの結果をplaceboを対照薬とする二重盲検試験で確認し,imipramineは“Panic” Attackに有効であるが,予期不安や回避行動には有効とは言い難いことも指摘した。Kleinらはさらに1967年,sample sizeをやや大きくした研究をも報告した。Kleinらの報告は当時注目された様子はあまりみられないが,1972年セントルイスのワシントン大学グループによって発表された,いわゆるFeighner診断基準中,不安神経症(anxiety neurosis)の項目16)にその反響が認められる。Panic Disorderの名称はSpitzerら62)の作成した研究用診断基準(RDC,1978)に初めて独立した診断分類病名として取り上げられるに至り,1980年米国精神医学会による公式疾病分類(DSM-Ⅲ)にも採用され,1987年の改訂(DSM-Ⅲ-R)1)では,大項目の不安障害の下位分類の筆頭にあげられるまでになった。
 Panic Disorderの概念の内実は,その誕生の時から,特定の薬物に対する著明な治療反応性を示す,比較的まとまりのよい臨床症候群という観点から取り上げられていた。この疾病分類の妥当性検証の際の外的基準の1つである治療反応性を含むという点で,Panic DisorderはFreudの不安神経症とも,森田の発作性神経症とも一線を画するものである。本展望のテーマであるPanic Disorderの薬物療法の検討は,逆にPanic Disorderという疾病診断分類の妥当性17,39)をより広く検討することにもなると言えよう。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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