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文献詳細

雑誌文献

精神医学33巻8号

1991年08月発行

文献概要

研究と報告

系統的健忘を呈した1症例

著者: 渡辺登1 秋元豊2

所属機関: 1駿河台日本大学病院精神神経科 2梨香会秋元病院

ページ範囲:P.833 - P.839

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 【抄録】 「私は17歳」と訴え,次いで夫との結婚生活が追想できない系統的健忘を呈した25歳の主婦の症例を報告した。かつて報告された系統的健忘や全生活史健忘と比較検討し,次のような知見を得た。(1)本例は生活歴で両親の離婚やいじめ,不良行為,退学などの精神葛藤を認め,性格で抑圧的,未成熟を示しており,これらは全生活史健忘の症例と類似していた。さらに,健忘の回復過程も全生活史健忘のそれとほぼ一致していた。それにもかかわらず,全生活史健忘に至らなかったのは,安心して帰れる家があったからと考えられる。(2)本例の健忘発生機序として,家出した後,17歳で家に戻らなかった後悔から,17歳よりの生活をやり直したい願望を抱き,そこで「私は17歳」と訴え,さらに父への依存的感情から夫を否定したため系統的健忘を示したと推測された。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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