文献詳細
「精神医学」への手紙
Letter—「行動と認知と情動—病態の探索をめぐって」(1)を読んで/Answer—レターにお答えして「行動と認知と情動—病態の探索をめぐって」補遺
著者: 丹羽真一1
所属機関: 1東京大学病院精神神経科
ページ範囲:P.900 - P.901
文献概要
認知機能の発達が不十分な個体発達の初期においては,情動は情報の自己中心的な意味処理と行動の選択に重要な役割を果たしています。認知機能の成熟に伴って認知と行動の連結が強まります。しかし成熟段階においても情動は脳の情報処理の中で意味の認識にバイアスをかける,意欲・動機づけなどにより認知・行動の全体的な枠組みを設定するなどの役割を果たすものと考えられます。問題は認知と情動とでどちらかが一次的な情報処理システムであるという関係があるかという点です。Pankseppが主張している一次性情動過程という意味は進化的にいって古く一次性であるという意味であり,脳の中で情動が一次的であるということではないと思われます。情報は両システムで並列・分散的に処理されるものと考えられます。
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