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文献詳細

雑誌文献

精神医学34巻1号

1992年01月発行

文献概要

研究と報告

血清Na値は正常範囲を示し,振戦せん妄に伴ってcentral pontine myelinolysisを来したアルコール依存症の1症例—MRI所見とその成因について

著者: 榎田雅夫1 松岡孝裕1 加沢鉄士1 山内俊雄1

所属機関: 1埼玉医科大学精神医学教室

ページ範囲:P.31 - P.37

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 【抄録】 アルコール離脱後,振戦せん妄に伴ってcentral pontine myelinolysis(CPM)が発症したと考えられたアルコール依存症の1症例を報告し,その成因について考察した。これまでCPMは剖検で診断されていたことが多いが,本例は頭部MRIのT1強調画像で橋底部中央に円形の低信号域,T2強調画像で同部に高信号域を認め,CPMと診断された。頭部CTでは橋底部に異常所見を認めず,本疾患の診断にMRIは有力な検査法と考えられた。
 現在,CPMの成因として低Na血症の急速補正,ないしは過剰補正が重要視されている。本例の血清Na値は経過中つねに正常範囲を示し,その成因に低Na血症の急速補正,過剰補正を考えることは難しく,アルコール離脱それ自体が発症に関与したことが推測された。また,本例に認められた貧血,肝機能障害,高アンモニア血症,低K血症などが多因子的に関与した可能性も考えられた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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