研究と報告
悪性症候群における髄液モノアミン動態—その継時的変化と他の副作用における髄液モノアミン動態との比較
著者:
西嶋康一1
石黒健夫1
橋本有滋1
所属機関:
1自治医科大学精神医学教室
ページ範囲:P.69 - P.76
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【抄録】 典型的な悪性症候群11例において,髄液中のHVA,5-HIAA,NA,MHPGの測定を,その病相期から改善後にかけて継時的に行い,また,抗精神病薬の他の副作用3例(薬剤性パーキンソン症候群2例と抗精神病薬投与中,高熱とrhabdomyolysisを呈したが錐体外路症状を認めなかった1例)においても同様の検査を行い,正常対照群の値と比較し以下の結果を得た。(1)悪性症候群では,その病相期で髄液HVA,5-HIAAは有意に低値であり,改善後もその低値は1カ月以上持続していた。一方,NA,MHPGは病相期で高値を示し,改善後は正常に復した。(2)薬剤性パーキンソン症候群2例では,HVA,5-HIAAは低値であったが,NA,MHPGは正常対照群の値と比べ変化はみられなかった。(3)高熱,rhabdomyolysisを呈した症例では,HVA,5-HIAA,NA,MHPGすべてが異常高値を示した。以上から,HVA,5-HIAAの低値は錐体外路症状と,NA,MHPGの高値は高熱などの自律神経症状と関係のあることが示唆された。