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雑誌目次

論文

精神医学34巻10号

1992年10月発行

雑誌目次

巻頭言

精神療法を求めて

著者: 大原健士郎

ページ範囲:P.1038 - P.1039

 先日,息子の留学先であるトロントを訪ねた。彼は私より30歳年下の精神科医である。彼は学生時代には夏休みを利用して高良興生院に通い,森田療法を見学し,患者に率先して作業をしたりして,私の恩師である高良武久先生を喜ばしたりしていたが,精神科医になってからは,すっかり方向転換して,分子生物学にのめり込んでいる。夕暮れにトロントの街を歩きながら,お互いの近況を語り合った。息子は基礎と臨床のはざまに立って,ひとりで悩んでいるようだった。基礎的な研究が進めば進むほど,臨床がおろそかになることに苦悩している口振りだった。しかしそれは,自分が選んだ道である。自分で解決しなければならない問題である。私は,息子に「今夜,森田正馬の人と業績について講義をしてやろうか」と提案した。彼は,意外にも私の申し出を素直に受け入れた。
 息子のマンションの一室。風呂上りの親子はラフな格好で,ソファーに腰を下ろした。スライドも黒板もない。私はエピソードをたっぷり盛り込んで,森田先生の生涯を語り,森田療法の起源とネオモリタセラピーの意義を講義した。息子は最初のうちはメモをとっていたが,そのうちソファーに寝転がって私の講義に耳を傾けた。森田療法の理論や実践は息子も先刻ご承知である。私は1人の分からず屋の精神科医を魅了するように工夫した。とにかく,笑わせてやろうと思った。約2時間,私は一世一代の名講義をした。息子は終始笑い続けていた。変な講義が終わると,彼は「ありがとう」と素直に感謝したが,「ネオモリタセラピーは良くない。せっかく森田療法という言葉が定着してきたのに,それを壊すのは森田療法学会理事長である親父の売名行為ではないか」とか,「森田先生は変人だね」とか意見を述べた。それに対して,また私が講義を始めた。森田療法は森田一代の名称でよい。森田没後の森田療法は理論の面でも技法の面でもネオモリタと言うべきである。精神分析も決してフロイト療法とは言わない。だからこそ,あのような発展を遂げたではないか。森田先生は変人や奇人のようにみられるが,先生が終生求めていたのは,常識的な平凡な人間である。平凡であろうとすることは極めて困難なことである。森田先生は「平凡の中の非凡」ともいうべき人物だ。生意気な息子は,結論を保留した。

展望

強迫の位置づけとその周辺

著者: 中澤恒幸

ページ範囲:P.1040 - P.1056

■はじめに
 有名なFreud Sの“ねずみ男”にみる強迫性障害Obsessive-Compulsive Disorder(OCD)は古典的精神分析による成因論の一端である。ヒトの精神的な誕生(Mahler M著:The Psychological Birth of theHuman Infant.1975),すなわち成長はその過程の繰り返しと積み重ねによって成立する。最近辻82)は成長の詳細を明らかにした精神分析の功績を,彼の症例の上に展開した。そして時代の歩みはさらに広い視野に立ったOCDの再検証を要求している。
 第1に強迫性compulsivity(強迫行為compulsion)として,従来のmotor tic,トーレット症状群のみならず,衝動性impulsivity(衝動行為impulsive act)としての過食,過飲水,抜髪,薬物依存から自傷など,現代の社会病理にみる自己破壊衝動thanatos,そして境界性人格障害Borderline-Personality Disorder(BPD)まで,OCD関連領域が大きな問題となっている。第2に森田理論,強迫者,Kraepelinの精神病質人格論などが加わったOCDの先入観が,我々に固定してしまったことである。周知のごとく強迫性格は社会的に大切な性格特徴であり,強迫性格の多くの人々はOCD発症をしていない。

研究と報告

Clomipramine点滴治療中に悪性症候群を発症した3症例

著者: 井上猛 ,   北川信樹 ,   佐藤雅俊 ,   大森哲郎 ,   小山司

ページ範囲:P.1057 - P.1063

 【抄録】 最近我々は,セロトニン再取り込み阻害能の強いclomipramine点滴静注による抑うつ状態の治療中に,悪性症候群を発症した3症例を経験した。発症前の精神症状は全例,精神運動抑制が強く亜昏迷状態であった。抗精神病薬は2例でsulpirideおよびlevomepromazineを少量併用していたが,1例では使用していなかった。悪性症候群の症状は筋強剛,発熱,血清CPKの上昇など,抗精神病薬によるものと同様であった。2例はdantrolene,L-DOPAの点滴による治療で,1例は対症療法のみで2〜4週間中に回復した。本症例における悪性症候群発症の機序として,個体側の要因に加え,clomipramine点滴による急激なセロトニン機能増強と弱いドーパミンD2受容体遮断作用が関与した可能性が示唆される。

異なるタイプの心因性健忘を呈した5症例についての検討

著者: 白木澤史子 ,   高橋典克 ,   道又利 ,   齊藤悦郎 ,   伴亨 ,   鈴木廣子 ,   酒井明夫 ,   三田俊夫

ページ範囲:P.1065 - P.1071

 【抄録】 青年期に発症した心因性健忘の5例を経験した。心因性健忘には,健忘が自己の全生涯に及ぶ「全般健忘」のほかに,P. Janetの記載した,ある出来事に結びついた心像体系に関する「系統的な健忘」と,何らかの出来事で占められている時期に「限局した健忘」がある。我々の5症例のうち症例1,2は全般健忘,症例3は限局した健忘,症例4は限局した健忘と系統的な健忘,症例5は系統的な健忘を呈した。
 各タイプの健忘の発症に関与する個体・環境要因について検討した。「限局した健忘」と「系統的な健忘」は心因と健忘の内容,期間に相関性があり,「全般健忘」に比べ環境要因の占める割合が高いと考えられた。
 Janetの神経症理論は発現する健忘の種類ばかりでなく,随伴する解離性障害,転換性障害の種類や発現順序を統一的に理解する上で有用と考えられた。

特異な経過を示した全生活史健忘の1例

著者: 赤崎安昭 ,   鮫島和子 ,   橋口知 ,   長友医継 ,   永瀬文博 ,   野間口光男 ,   松本啓

ページ範囲:P.1073 - P.1078

 【抄録】 全生活史健忘の回復後,一過性に精神症状が出現した症例を経験した。本症例は,被暗示性,自己中心性の強いヒステリー性格傾向と感情抑制的であるが内的統制が未熟な性格特性を基底とし,経済的な慢性の持続的葛藤,職場の配置転換による新たな葛藤の出現により,ヒステリー性機制を利用して健忘症状が形成されたものと思われた。健忘症状は,催眠面接により改善し復職したが,2カ月後,被害,関係および注察妄想の精神症状が出現した。精神症状は,haloperidol 2.25mg/day投与3週目頃より改善し,4カ月後には治療を終了した。本症例は,健忘症状の臨床経過に関しては,これまでの報告とほぼ一致していたが,健忘症状の回復後一過性に被害,関係,注察妄想などの精神症状が出現している点で特異的であり,解離性障害の中でも比較的稀な症例と考えられた。

月経周期に関連した周期性精神病の1症例—体温と血中ホルモンの変動

著者: 齋藤巨 ,   野島秀哲 ,   岡本典雄 ,   大原健士郎

ページ範囲:P.1079 - P.1086

 【抄録】 症例は29歳の女性で,27歳時に第2子を出産後,約6カ月の抑うつ状態を呈した後に16ヵ月間躁うつ的病相を繰り返した。病相の出現は月経周期に関連しており,一過性の被害関係妄想,追想障害の存在などから月経周期に関連した周期性精神病と考えられた。抗精神病薬や抗うつ薬,Iithium carbonateなどに反応せず,carbamazepineを併用することによって病状の改善が認められた。入院当初より継時的に患者の体温と血中ホルモンの測定を行い,臨床経過に伴う体温,ホルモンの変化について検討した。病状改善前には,血中prolactin,progesterone値の異常や,基礎体温での2相性の消失,直腸温でのリズムの異常が認められたが,病状改善後には改善傾向を示した。検査結果より周期性精神病におけるリズム障害の存在を推定した。lithium carbonateとcarbamazepineの併用が内因性リズムの異常を是正し,病状改善をもたらした可能性が推測された。

精神科入院中の患者にみられる強迫的多飲および水中毒に関する研究—体重日内変動測定による予防を中心として

著者: 阪本淳

ページ範囲:P.1087 - P.1096

 【抄録】 対象は当院入院患者に対する病棟内日常行動観察の結果,中等度以上の多飲(松田の基準)を認めた患者のうち検査の説明を本人に行い,同意の得られた20例(男性18例,女性2例,平均年齢46.6歳)である。方法は21日間,午前と午後の2回,排尿後に体重測定を行った。また,週1回,計3回,午前と午後に血清Na濃度を測定した。初回の採血時にADH,ANP,尿比重,尿浸透圧なども測定した。その結果,水中毒の既往を有する群(水中毒危険群)と有しない群(良性多飲群)に分類すると,体重日内変動および血清Na変動はいずれも水中毒危険群で有意に大きかった。そして,血清Na低下と体重日内増加との間では両群ともに有意の相関がみられた(r=-0.83,p<0.001)。これらは,水中毒危険群では水中毒を反復する危険が大きく,体重日内変動が血清Naの変動をよく反映するため水中毒の危険を予測する有用な指標であることを示した。さらに,水中毒の発現頻度,発現機序,予防と対策などについても述べた。

精神分裂病における二重課題の処理障害—P300を指標とした認知資源配分の検討

著者: 古知貴恵子 ,   古賀良彦 ,   村崎光邦

ページ範囲:P.1097 - P.1102

 【抄録】 精神分裂病における二重課題(dual task)の処理障害を明らかにする目的で,健康成人11例,精神分裂病患者10例につき,単一課題および二重課題処理時のERPを記録し,P300振幅を比較した。その結果,健康成人では,二重課題処理時には,情報処理資源が課題の難度に応じて適切に配分されることが示された。一方,精神分裂病患者では単一課題については,ある程度,処理が可能であるものの,複数課題に関しては処理が極めて困難であり,複数情報の制御および情報相互間の共応の障害があることが示唆された。

アルツハイマー型痴呆の病前性格と症状顕現状況

著者: 佐藤新

ページ範囲:P.1103 - P.1112

 【抄録】 アルツハイマー型痴呆の患者16名を対象に,数量化理論Ⅲ類を適用して作成した症例散布図を参照しながら代表的症例を呈示し,その病前性格と症状顕現状況を中心に臨床的視点からの分析を試みた。今回の我々の症例にみる病前性格は,従来報告されてきたアルツハイマー型痴呆患者のそれと一部相違して,病前に対人的積極性があり活発だった症例も少なからず認められた。また痴呆の顕現や増悪に影響を及ぼすであろう状況的要因を,(1)役割喪失,(2)それまでのライフスタイルを阻む方向への家族力動の変化,(3)大切な人物との別離,(4)居住生活空間の変化の4つとしてまとめた。これらは広義の対象喪失とみなすことができる。病前性格とライフスタイルを中間項にして患者の生活史をたどると,ストレスから痴呆症状顕現へと至る過程を連続したものとして把握し,説明することが可能であるといえよう。

交代制勤務者の睡眠覚醒障害と抑うつに関する検討

著者: 堀口淳 ,   田中昭 ,   助川鶴平 ,   伊賀上睦見 ,   高須賀康子 ,   矢野かほる ,   井上博幸

ページ範囲:P.1113 - P.1118

 【抄録】 3交代制夜間勤務に従事する看護者と企業に勤務する日勤労働者を対象として,睡眠覚醒障害に関するアンケート調査とZungの自己評価式抑うつ尺度を実施し,看護者530人と企業勤務者948人の回答を分析した。看護者は企業勤務者と比較して入眠困難(59.0%),中途覚醒(54.9%),早朝覚醒(29.6%)を示すものが有意に高率で,日中の眠気(80.0%)や疲労感(56.7%)も高率であった。さらに看護者ではいびき(54.2%)や無呼吸(16.2%)といった睡眠時無呼吸症候群の疑われるものや,restless legs症候群(18.9%)や睡眠時ミオクローヌス症候群(13.5%)の疑われるものも有意に高率であった。またZungの自己評価式抑うつ尺度でも,看護者では軽度うつ(41.1%),中等度うつ(19.2%),重度うつ(7.8%)と,企業勤務者より有意に高率に抑うつ傾向を認めた。

短報

特異な脳波所見を呈したステロイド精神病の1例

著者: 奥野孝代 ,   植木啓文 ,   児玉佳也 ,   高井昭裕 ,   岩間久和 ,   山下元基

ページ範囲:P.1121 - P.1123

■はじめに
 我々は,ステロイド精神病と診断しうる1例を2回にわたり治療する機会を得た。この症例においては,入院時には対話可能な状態にありながら,睡眠時様脳波所見(Stage 2)がみられたが,精神状態の安定化とともに,正常安静覚醒時脳波所見が得られるという,臨床症状の変化に伴う脳波所見の変動が認められた。本論において,我々は,この症例の臨床経過を報告し,若干の考察を加えたい。

走馬燈のように複数の過去の情景を追体験した片頭痛・てんかん症候群の1例

著者: 兼本浩祐

ページ範囲:P.1125 - P.1127

 部分てんかんにおける発作放電の伝播に関して,その伝播の方向が,後頭葉から側頭葉へという方向性をとっており,その逆の方向へと向かわないことは,いくつかの報告で指摘されている6,8〜10)。我々は,以前,母親が視覚性前兆に続発する片頭痛の既往歴を持っていた患者において,視覚性前兆が先行する片頭痛から,次第に既知感が出現するようになり,最終的に大発作への移行が観察されるようになった症例を報告する機会があった7)が,今回,再び,眼性片頭痛の遺伝歴を有し,視覚性前兆から既知感へと展開する片頭痛を持った女性例を体験した。本症例は,以前の症例と同様,片頭痛とてんかんが偶発的にではなく因果的関連を持って共存する片頭痛-てんかん症候群1)の発現機序を病歴の中でたどることのできる興味深い症例であると思われるので報告するとともに,既知感を特徴とする夢様状態の発現機序について若干の文献的考察を加えた。

紹介

我が国におけるMedical Psychiatryの展望—立川共済病院Medical Psychiatric Unit(MPU)の経験から

著者: 野村総一郎 ,   中村誠 ,   松平順一

ページ範囲:P.1129 - P.1135

■はじめに
 ここ数年来,米国を中心とした精神医療の現場でmedical psychiatry(以下MP)という言葉を耳にすることが多くなってきた。MPを定義すれば,「精神疾患と身体疾患の合併している場合の医療」ということになるが,米国では,単なる合併症治療という狭い枠組みにとどまらず,近未来の精神医学全体のアイデンティティーをめぐっての一種の思想的な議論にまで高まりをみせている様子である。つまり,その基本には「精神科医が心身両面にわたって,広く責任を持ち,主体性を持って治療に当たる」という姿勢があり,今後の医療でますます重要となる身体医学と精神医学の知識の統合のための実践者としては,身体科医よりも精神科医が適任だという考えが強く打ち出されている。他科の医師が治療の主体となり,精神科医がアドバイスするconsultation-liaison psychiatry(以下リエゾン精神医学)とは逆に,精神科医があくまで主導権を握る点が最大の特徴といえよう。
 一方,我が国の現状をみると,いくつかの総説6,8,9)が最近出たものの,MPはまだほとんどなじみのない概念といってよいであろう。本来MPはmedical psychiatric unit(MPU)と呼ばれる専門病棟において体現されるものとされ,米国では1990年時点で22のMPUが運営中であり,さらに24あまりが計画中という7)が,もちろん我が国にはこれまでMPUは存在しなかった。我々の立川共済病院では数年来,総合病院精神医学の実践の中でMPの必要性を痛感し,また1981年より始まった東京都精神科患者身体合併症医療事業11)に参画することにより,MPの方向性を持った病棟単位を組織してきたが,1991年度より我が国初のMPUとして正式発足した。そこで本稿では我々のMPUでの経験を報告し,米国MPUとの比較なども通して,本邦におけるMPUの今後の可能性について論じたい。(なお立川共済病院でMPUとの正式呼称を用いたのは1991年からであるが,約10年前から機能的にはMPUと同一の病棟運営を行っている。その一部についてはすでに発表した8)ので,今回は1990〜1991年の臨床統計をMPUとして報告する。)

古典紹介

アンビュラトリイ・スキゾフレニア・第1回

著者: 東孝博 ,   柏瀬宏隆

ページ範囲:P.1137 - P.1142

(1)歴史的概観
 ブロイラーBleulerが1911年に分裂病群(the Group of Schzophrenias)に関するモノグラフを出版した時には,クレペリンKraepelinが早発性痴呆(dementia praecox)の臨床像を記述してから15年も経過していなかった。ブロイラーの見解は突然に形作られるはずもなく,また,アシャッフェンブルクAschaffenburgのハンドブックの第2巻として出版されたブロイラーのこの卓越した著書は,1日どころか1年間かけても完成されるわけでもないので,ブロイラーとクレペリンが同時に,自分たちの考えをまとめ始めていたと考えても,あながち不合理ではない。19世紀終わり近くにおける臨床的,理論的精神医学の歴史は,クレペリンとブロイラーの双方の仕事に,はっきりと反映されている。2人は1880年代になって活動を始め,ヴントWundtのライプチッヒLeipzig学派の影響を受けた。ヴントの関心は生理学的心理学者のそれであり,思考の連想という現象を重視した。
 ヴントの影響を受けている間は,クレペリンは,ほとんど病的思考の形式的側面だけに関心を抱いていた。このことはクレペリンに数多くの症状を発見させたが,しかし,彼本来の関心は常に,一貫した臨床像を得ようとすることにあった。しかし,厳密に言うと,クレペリンは臨床像を明確に示そうとする場合に,臨床精神医学の研究が直接提供するものの影響をそれほど受けなかった。というのは,精神医学は疾患を取り扱っているのであるから,「明確に限定され,正確に診断が下され,正しく予後の見通しがつけられるといった,はっきりした疾患セットを持つべきである」という一般医学のパターンに精神医学も従わなくてはならないと考えていたからである。この意味では,精神医学はそれ自身の本質やそれ自身の臨床的な問題に従って発展してきたというよりも,むしろ非常に多くの様々な疾患や疾患群を発見してきた,精神医学以外の臨床医学の発展をまねることによって発展してきたと言える。このため,クレペリンは患者のパーソナリティの詳細な特徴をほぼ完全に無視するようになった。すなわち,患者の個人的な生活史や個人的な問題は,ある患者群に共通したものである限りにおいてのみ,クレペリンは関心を抱いた。ひとりの人間としての心理的な適応のあり方などというものは,クレペリンの注意からは外れていたように見える。

動き

「光ファイバー通信機構(テレビ電話)の臨床精神医学への応用」第1回シンポ印象記

著者: 原淳

ページ範囲:P.1144 - P.1145

 1992年1月29日,「光ファイバー通信機構(テレビ電話)の臨床精神医学への応用」第1回シンポジウムが,東京工業大学保健管理センター主催で,同大百年記念館にて開催された。本シンポジウムにおいて,近年普及してきたテレビ電話の臨床精神医学への応用に関して,精神医学,法律学および理工学の権威が集まり,三者の立場からの講演がなされ,会場からの質疑応答も含め活発な議論がなされた。

「精神医学」への手紙

Letter—「病相頻発型気分障害の10例の臨床的特徴」について/Answer—レターにお答えして—Wehrらの報告との異同

著者: 冨高辰一郎 ,   坂元薫

ページ範囲:P.1146 - P.1147

 Dunnerらが1974年にラピッドサイクラー(以下RC)という概念を提唱して以来,欧米を中心として臨床研究が進められていますが,最近本邦でも本誌を中心としてその研究報告が掲載されるようになってきました。本誌第34巻第4号には中村氏らがRCのレトロスペクティブな調査報告をされており興味深く拝見しましたが,ここで私どもの意見を簡単に述べさせていただきます。
 中村氏らはその報告において「病相頻発化開始時より平均7.9年の経過を調べ,少なくとも調査時点から遡った2年間にほぼ寛解しているものが3名,1〜2年に1回の軽度ないし中等度の躁かうつの病相がみられるものが5名,自殺者が2名であった。」と述べ,それをRCの研究では評価の高いWehrら2)の結果と比較し「ほぼ一致したもの」と考察しています。

基本情報

精神医学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-126X

印刷版ISSN 0488-1281

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