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文献詳細

雑誌文献

精神医学34巻10号

1992年10月発行

文献概要

展望

強迫の位置づけとその周辺

著者: 中澤恒幸12

所属機関: 1東京都済生会中央病院 2長谷川病院

ページ範囲:P.1040 - P.1056

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■はじめに
 有名なFreud Sの“ねずみ男”にみる強迫性障害Obsessive-Compulsive Disorder(OCD)は古典的精神分析による成因論の一端である。ヒトの精神的な誕生(Mahler M著:The Psychological Birth of theHuman Infant.1975),すなわち成長はその過程の繰り返しと積み重ねによって成立する。最近辻82)は成長の詳細を明らかにした精神分析の功績を,彼の症例の上に展開した。そして時代の歩みはさらに広い視野に立ったOCDの再検証を要求している。
 第1に強迫性compulsivity(強迫行為compulsion)として,従来のmotor tic,トーレット症状群のみならず,衝動性impulsivity(衝動行為impulsive act)としての過食,過飲水,抜髪,薬物依存から自傷など,現代の社会病理にみる自己破壊衝動thanatos,そして境界性人格障害Borderline-Personality Disorder(BPD)まで,OCD関連領域が大きな問題となっている。第2に森田理論,強迫者,Kraepelinの精神病質人格論などが加わったOCDの先入観が,我々に固定してしまったことである。周知のごとく強迫性格は社会的に大切な性格特徴であり,強迫性格の多くの人々はOCD発症をしていない。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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