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文献詳細

雑誌文献

精神医学34巻10号

1992年10月発行

文献概要

研究と報告

特異な経過を示した全生活史健忘の1例

著者: 赤崎安昭1 鮫島和子2 橋口知1 長友医継1 永瀬文博1 野間口光男1 松本啓1

所属機関: 1鹿児島大学医学部神経精神医学教室 2鹿児島大学医学部附属病院心理室

ページ範囲:P.1073 - P.1078

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 【抄録】 全生活史健忘の回復後,一過性に精神症状が出現した症例を経験した。本症例は,被暗示性,自己中心性の強いヒステリー性格傾向と感情抑制的であるが内的統制が未熟な性格特性を基底とし,経済的な慢性の持続的葛藤,職場の配置転換による新たな葛藤の出現により,ヒステリー性機制を利用して健忘症状が形成されたものと思われた。健忘症状は,催眠面接により改善し復職したが,2カ月後,被害,関係および注察妄想の精神症状が出現した。精神症状は,haloperidol 2.25mg/day投与3週目頃より改善し,4カ月後には治療を終了した。本症例は,健忘症状の臨床経過に関しては,これまでの報告とほぼ一致していたが,健忘症状の回復後一過性に被害,関係,注察妄想などの精神症状が出現している点で特異的であり,解離性障害の中でも比較的稀な症例と考えられた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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