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我が国におけるMedical Psychiatryの展望—立川共済病院Medical Psychiatric Unit(MPU)の経験から
著者: 野村総一郎1 中村誠1 松平順一1
所属機関: 1国家公務員等共済組合連合会立川病院MPU
ページ範囲:P.1129 - P.1135
文献購入ページに移動ここ数年来,米国を中心とした精神医療の現場でmedical psychiatry(以下MP)という言葉を耳にすることが多くなってきた。MPを定義すれば,「精神疾患と身体疾患の合併している場合の医療」ということになるが,米国では,単なる合併症治療という狭い枠組みにとどまらず,近未来の精神医学全体のアイデンティティーをめぐっての一種の思想的な議論にまで高まりをみせている様子である。つまり,その基本には「精神科医が心身両面にわたって,広く責任を持ち,主体性を持って治療に当たる」という姿勢があり,今後の医療でますます重要となる身体医学と精神医学の知識の統合のための実践者としては,身体科医よりも精神科医が適任だという考えが強く打ち出されている。他科の医師が治療の主体となり,精神科医がアドバイスするconsultation-liaison psychiatry(以下リエゾン精神医学)とは逆に,精神科医があくまで主導権を握る点が最大の特徴といえよう。
一方,我が国の現状をみると,いくつかの総説6,8,9)が最近出たものの,MPはまだほとんどなじみのない概念といってよいであろう。本来MPはmedical psychiatric unit(MPU)と呼ばれる専門病棟において体現されるものとされ,米国では1990年時点で22のMPUが運営中であり,さらに24あまりが計画中という7)が,もちろん我が国にはこれまでMPUは存在しなかった。我々の立川共済病院では数年来,総合病院精神医学の実践の中でMPの必要性を痛感し,また1981年より始まった東京都精神科患者身体合併症医療事業11)に参画することにより,MPの方向性を持った病棟単位を組織してきたが,1991年度より我が国初のMPUとして正式発足した。そこで本稿では我々のMPUでの経験を報告し,米国MPUとの比較なども通して,本邦におけるMPUの今後の可能性について論じたい。(なお立川共済病院でMPUとの正式呼称を用いたのは1991年からであるが,約10年前から機能的にはMPUと同一の病棟運営を行っている。その一部についてはすでに発表した8)ので,今回は1990〜1991年の臨床統計をMPUとして報告する。)
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