icon fsr

文献詳細

雑誌文献

精神医学34巻12号

1992年12月発行

特集 精神科領域におけるインフォームド・コンセント

インフォームド・コンセントの歴史—その法理と医学的側面

著者: 加藤伸勝1

所属機関: 1京都府立医科大学

ページ範囲:P.1277 - P.1283

文献概要

 昔から“「医」は「威」であり,「衣」である(長尾藻城:噫医弊)”といわれたという。「衣」はつつむ,かばうの意と権威の衣の意にも通じる。ヨーロッパの医の倫理の歴史は,紀元前5世紀の「ヒポクラテスの誓い」に遡り,彼の名と共に繰り返し語られてきた。
 「ヒポクラテスの誓い」19)には良医の条件,医道のあり方が説かれており,「能力と判断の限り患者に利益するとおもう養生法をとり,悪くて有害と知る方法を決してとらない。頼まれても死に導くような薬を与えない。それを覚らせることもしない,同様に婦人を流産に導く道具を与えない。―いかなる患家を訪れるときも,それはただ病者を利益するためであり―女と男,自由人と奴隷のちがいを考慮しない。他人の生活について秘密を守る,その誓いを守り続ける限り,いつも医術の実施を楽しみつつ生きてすべての人から尊敬されるであろう……」と述べられている。今日まで語り継がれている赤髭医師の心境は正にこの誓いのとおりであり,これこそは善意のパターナリズムの真髄ともいえる。それゆえ,医師は神のごとく,かつまたカリスマ的存在者であることが長く求められてきたのである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら