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文献詳細

雑誌文献

精神医学34巻12号

1992年12月発行

文献概要

特集 精神科領域におけるインフォームド・コンセント

同意能力と治療拒否権

著者: 高柳功1

所属機関: 1有沢橋病院

ページ範囲:P.1317 - P.1323

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■はじめに
 医療は医師,あるいは医療スタッフと患者の良い人間関係の上にのみ成立する,とよくいわれる。このことは,とりわけ医師と患者の良い人間関係が,医療の結果に大きく影響することを示しており,実際,臨床的にも良い人間関係がないところに,良い治療効果は生まれないことは広く経験される事実である。これは精神科医療でも例外ではなく,医師と患者の信頼関係が,精神科医療の基本となる。
 幻覚や妄想のために疎外されたり,陰性症状のために,社会的に引きこもったりする患者が,治療者にだけは心を開き,回復のきっかけをつかむことは,臨床的にもよく経験することである。
 医師と患者の信頼関係を作り,発展させるためには,病状や治療方針,今後の見通しについて,医師が十分説明し,患者が理解,納得して同意するという治療過程がなによりも大切である。これは病覚がなく,現実検討が不十分な患者であっても求められるところである。
 しかし,精神科医療では,しばしば病状のため意思疎通が困難であったり,被害感情ゆえに過度に防衛的であったり,しばしば人間関係を保つことが困難となり,治療も難しくなることがある。治療拒否対医療の確保という,一見矛盾した命題に対処しなければならないことも稀ではない。このように考えると,精神科領域は,インフォームド・コンセントに関して最も困難な分野の一つであろう。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-126X

印刷版ISSN:0488-1281

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