文献詳細
「精神医学」への手紙
Letter—Tiapride追加により悪性症候群を生じたアルツハイマー型老年痴呆の1例
著者: 今泉寿明1 伊藤榮彦1
所属機関: 1可知病院
ページ範囲:P.1338 - P.1338
文献概要
アルツハイマー型老年痴呆に合併したSMは,本邦では2例の既報告がある1,2)。本例ではSMの症状は典型的であり,診断に困難はなかった。SMの原因と推定されるTPDは,sulpirideと同じくbenzamide系化合物に属し,強力なdopamineD2受容体遮断作用を有し,特に老齢者の攻撃的行為,精神興奮を標的に広く用いられている。精神科以外の医師は,抗精神病薬の投与に強い抵抗を感じるのが常であるが,構造,作用上は抗精神病薬に準ずるTPDについては比較的安易に用いる傾向がある。現状では,老齢者のSMは抗精神病薬の使用頻度を反映して低く,TPDによる老齢者のSMも現在までに2例の報告があるのみである1)。しかし,今後,TPDの広範な使用を反映して症例が増加する可能性があり,特にSMに通暁しない精神科以外の医師への啓蒙が必要と考えられる。
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